ISBN:4042955045 文庫 越前 敏弥 角川書店 2006/03/10 ¥580

<承前>

本作の冒頭だったか巻末だったか忘れてしまったけど、本作の内容はフィクションであるが事実に基づいているという面白い言い回しがある。
壮大なヲタ話(フィクション)であればあるほど、事実(誰でも比較的、実在を否定する事が難しい)をちりばめる事で、作為点を目立たなくするのが作者の技量だと思うのだけれども...
3分冊化されている中巻以降においては、主人公が様々な暗号を解読していく「だけ」(勿論、場所の移動や、それなりの活劇シーンもあるにはあるのだが)の様で、妙に中だるみを感じてしまった。
というか、この作品自身が暗号が解読される(結果が作中人物及び作品世界にもたらすであろう影響については、単に読後感の「後味」を決めるだけのスパイスでしかないのだろう)過程をつぶさに追いかけるのが本筋なのだから、正しいといえば正しいんだけども、所謂、国産の「新本格」と呼称されるパズラー的作品群(つまり最初に不可思議な現象が提示され基本的にはロジカルに解決に至るというカタルシスを楽しむもの)に慣れ親しんでいる身としては、はっきり言って「面白い」とは思えなかった。
(あ〜っと私の場合は特殊かもしれない...古典的なSFと落語と推理小説と純文学の類は、一通り守備範囲内なので、かなりの「反則技」を使われても、まぁ驚かされる事は、あんまり無いからなぁ(^_^;))
たぶん、映像化されることを前提として、幾つかの建物の内観や外観、またモナリザを初めとする絵画の類が次から次へと登場して(確か、豪華図版入り版ってのも出版されてたよなぁ...あとは、柳の下で泥鰌掬いをするようなムックも数え切れないほど)一本筋の解釈に統合されていくんだけども、それが、その何というか、あまりにも「正統」なのがなぁ...なんとも。
こんな物語一つで、リアルに信仰している人達の気持ちがピクリとでも動くとでも思ってるのだろうか(映画会社の広報マン達って、ひょっとしてカトリック教徒そのものを舐めてるんじゃないか?少なくとも、作者は違うスタンスのように読めてしまうのだけれども)

ヒトの心は弱い。
故に、弱くないヒトデナシという概念を生み出すほどには強いものも派生する。
一度、生み出された概念は、その実在性よりも波及性・経済効率が優先されるのは群れの宿命。で、数百年、数億の人々の思いで塗り固められた「言葉」ってぇ〜代物は、その実在性の証拠?根拠?なんか一切受け付けないほどに強固だから。
(ちょっと前の別の群れの話になるけれど、「誰か」の言うとおりにすると「パラダイス」へ到達できるという「お話」に唆されて・心の底から信じて・端っから疑って・残された家族の生活の安泰を保障されて、操縦棹を握った連中も居たっけかなぁ)

...悪いんだけどねぇ、せっかく手を差し伸べてくれてるのは嬉しいというか、在り難いというか思わないでもないんだけども...ごめん、私は、その中だと落ち着けないんだよ...そっちに居るためには、まずは、この根腐れした性根を、まずは洗い清めないと成らないんだろうけども...そうするとね、たぶん、何にも残らないと思うから...「虚魂」の方だったら、そこの鏡に映ってるから幾らでも持っていってもらっても構わないし、好きなように料理してもらっても好いんだけどねぇ。
...ごめん、私は、たぶん21グラム足りて無い(^_^;)

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kaj

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